■ 電池ケースの製作
[2015/03/22 09:57:31]
3Dプリンターによる単三電池ケースの造形方法を簡単に紹介します。私が使っている 3D CAD は RSコンポーネンツ の Design Spark Mechanical です。何と言っても無料である点が気に入っています。あと、相性でしょうか。色々な CAD を試してみたのですが、マニュアル無しで使えるのが嬉しいです。
● 注意
ここで紹介する方法は、私がいつも行っている設計方法です。残念ながら他の方がどのよ うにして設計しているか拝見した事が無いので、これが標準かどうか判りません。こんな作り方をしているんだ、程度にお考えください。
また、3D CAD は既に使える事を前提にしています。 Design Spark Mechanical であれば「http://www.rs-online.com/designspark/electronics/jpn/page/mechanical」 に詳しい説明があります。
それでは開始です。 Design Spark Mechanical を起動して下さい。また、ノギスが必要になるので用意して下さい。
デジタル・ノギス
● 部品を集め計測する
まず最初にするのは、必要なパーツを集めます。ここでは単三電池用ケースを作るので、 単三電池が必要です。次に端子になる皿ネジ、ワッシャ、ナット、それに皿ネジを押さえるバネ(ノック式ボールペンのバネでも可)を用意します。
パーツが用意できたら、寸法を測ります。
● CAD で部品を作る
図1:パーツの設計
部品の計測が終わったら、3D CAD でそれぞれのパーツを作ります。その例を図1に示します。ここでは左から単三電池、M3x15mm皿ネジ(+側端子用)、M3x20mm皿ネジ(ー側端子 用)、六角ナット、ワッシャ、を作っています。
これらは個々に別ファイルで保存しておきます。図1は、新規作成で個々のパーツファイ ルを読込み、並べています。
● 部品を移動
図2:部品を配置する
次は、実際に使う状態を考え部品を移動します。単三電池を中心に考えると、左側がプラ ス側なので M3x15mm皿ネジを移動します。その皿ネジを固定するナットとワッシャを移動します。また、右側がマイナスなので M3x20mm皿ネジを移動します。長い M3x20mm を使ったのは、電池を押さえるバネの長さを考慮したものです。バネとナットを配置します。
● 電池ボックスを設計する
図3:電池ボックスを設計する
図2で配置したパーツに合わせて電池ボックスを設計します。ここで注意する事は、3D プリンタで造形する場合、誤差が生じるのを前提にする必要があります。
(1)穴の場合
穴の中心位置は正確ですが、例えばφ10mm の穴を開けても実際の造形物はφ9.6~9.8mmになってしまいます。また縦穴の場合には円形ですが、横穴の場合には横方向に広い楕円になります(フィ ラメントの収縮)。
これは3Dプリンタ自体の特性と使用するフィラメントの特徴から生じる誤差と思われ ます。使用する3Dプリンタに合わせて設計するようにして下さい。
何回か失敗し、経験すると実感します。
(2)サポートに関して
造形物がオーバーハングする場合には、造形時にサポートを付けるよう指定するとオー バーハングしても造形ミスは生じません。と説明されています。でも、サポート有りで造形すると、造形部分が変形したり、サポート部が凸凹になってしまいま す。できればサポートを使わないよう設計した方が良いと思います。
(3)サポート不要
サポートが不要になるよう設計するにしても限界があります。例えば図3の電池ボック スの場合、端子の皿ネジを通す穴が必要です。でも大丈夫、直角にハングしていない場合にはサポートは不要です。
(4)積層面が弱い
図4
DaVinci のような熱溶解積層型3Dプリンタは、積層面の強度が非常に弱いです。例えば、例えば図4の電池ボックスの場合、両端のつばが折れ易くなります。だからと 言って、造形方向を縦にするとオーバーハングができサポートが必要となってきます。ここいら辺は、造形物に合わせて考える必要があるでしょう。
注: 上記の電池ボックス程度の大きさでは問題ありませんが、幅が 100mm を越えるとフィラメントの熱収縮で積層面が剥がれてしまうということもあります。
● STL ファイルとして保存
図5:STL ファイルとして保存
設計が終ったら、電池ボックス本体以外のチェックを外し、STL ファイルとして保存します。
● 造形する
STLファイルが出来たら、次は造形です。スライサーソフトを立ち上げます。私は DaVinchi を使っているので XYZware を起動し、STL ファイルを読込みます。
図6:XYZware で STL ファイルを読込んだ様子
図6は XYZware で STL ファイルを読込んだときの様子です。DaVinci を接続していないと処理ができないので接続して下さい。DaVinci を接続したら「印刷」をクリックします。
図7:印刷設定
次は印刷設定です。今回はサポートが不要になるよう設計したのでサポートのチェックは 外しておきます。3Dの密度は 50% に、レイヤの高さは 0.2mm とします。これで「印刷」のボタンをクリックするとスライシングが始まります(まだ造形しない)。
図8:スライシング処理が終った様子
スライシングが終った様子を図8に示します。この後、印刷に移るのですが、キャンセル しスライシングデータを保存した方が良いと思います。私が使っているパソコンが悪いのか、XYZware は何故かクラッシュします。クラッシュする事を前提に処理が終ったら保存する様にした方が楽です。
スライシングデータを保存したら、再度印刷ボタンをクリックし印刷を開始して下さい。 造形ベットには十分にスティック糊を塗っておくことをおすすめします(臭いですが)。
● 造形結果
図9
造形結果を図9に示します。造形した電池ボックスにネジやその他を取付けた写真です。 市販の電池ボックは数十円で買えるのに、何故にわざわざ時間をかけてまで作るのか? そう疑問に思う方もいると思います。私も最初そう思ったのですが、市 販の物は端子が小さく、ワニグチクリップがよく外れます。上記の様にギザギザのあるネジが端子になっているとワニグチクリップが良く噛み外れる事はありま せん。そんな訳で自分で作っています。
● STL ファイルのダウンロード
ここで設計した STL ファイルを公開するので自由に使って下さい。
(1)単三電池一本用
(2)単三電池二本用
(3)単三電池三本用
(4)単四電池一本用
(5)単四電池二本用
(6)単四電池三本用
(7)単四電池一本用(バネあり)
[2015/03/22 13:21:45] 初稿
© 2015 Nishimura Hiromi (NiS-Lab)