パルスアーク溶接用電極ヘッド


 [2015/04/06 08:59:15]


ようやく使えそうな電極ヘッドが完成したので紹介します。


● 電極ヘッドとは


 溶接を開始するには、最初に電極と母材とを接触させ通電する必要がある。この初期通電 で大量の電流が流れる。電極と母材との接触抵抗で母材が高温になり溶け蒸発し、更にはプラズマ化する(?)。次の段階はアーク放電になります。発生したプ ラズマは電気を通し易いので電極と母材の間隔を離しても電流が流れアーク放電が生じます。このアーク放電による熱でアーク周辺の母材を溶かすことになりま す。


 上記現象を起こすには、(1)電極と母材を接触させる。(2)電極と母材に電気を流 す。(3)電極と母材を離しアーク放電を発生させる。と、この3つの段階が必要になる。(1)は単純に人が電極を持ち接触させることになるでしょう。 (2)は電極と母材の接触を検知し通電させることになります。あるいは電極を接触させ、フットスイッチで通電の指示をします。問題は(3)で、通電後、速 やかに電極と母材を引離す必要があります。この「速やかに」が問題で、少しでも遅いと電極と母材が固着してしまうことになります。そうなると電極と母材が 固着すると剥がすため電極の先端を折ってしまうことになります。電極の先端は尖っている必要があり、電極先端を削る作業が必要となります。電極先端部の形 状が溶接?に大きな影響を与えます。


 電極ヘッドに要求される昨日は、(a)電極と母材を引離す機能、(b)電極の先端が折 れた時に、簡単に取り外すことが出来なければならない。


 ちなみに、電極と母材を引離すにソレノイドアクチエータを使用しています。


● 初期型の電極ヘッド


memoPicture001.jpgmemoPicture002.jpg

図1:初期型電極ヘッド


 図1は最初に作った電極ヘッドです。タングステン電極の動きはスムースで、想定の通り 必要なタイミングでタングステン電極を母材から引離す事ができました。しかし、問題はタングステン電極の取外しでした。電極を取り外すには4本のネジを取 り外し、更に2個のイモネジを緩めてはじめて電極を取り外すことができます。これが思っていた以上に面倒でした。こんな事は使ってみないと判らないもので すから。


● 改良型の電極ヘッド


memoPicture003.jpgmemoPicture004.jpgmemoPicture005.jpgmemoPicture006.jpg

図2:改良版の電極ヘッド


 初期型の電極ヘッドの問題点であった、電極の取外し操作。これを改善すべく、ネジを締 めたままタングステン電極を取り外せないかと考えました。そこでヘッド先端部をキャップ状にし、はめ込む形にしています。また、このキャップが2つの部分 で構成されているケースを挟め、固定する役目をさせています。そうすることで本体ケースを止めるネジが2本不要となりました。この改良型の電極ヘッドを図 2に示します。


 図2を見て判る様、電極ヘッドの先端キャップを外すと電極を固定するイモネジが見え、 イモネジを緩めるとタングステン電極を取り外すことができるようになります。


● おまけ


memoPicture007.jpg


 この写真は溶接のタイミングを決める電子回路をブレットボードに組み上げ試験している 様子です。個人的に、配線が蜘蛛の巣状な所が気に入っています。制御には PIC16F88 を使っています。マイコン制御にすると「パルスを100回与えてからソレノイドに通電し電極を離す。さらに1000回パルスを与え終了する」のような操作 が簡単に指示できます。20年前ならタイマーICの 555 を使ったでしょうね。今回の回路で面倒だったのは、溶接部の電源が 24V で制御系が 5V であること。異なる電源を持つシステムで信号のやり取りが回路を煩雑にしている点です。回路も紹介したいのですが、見ての通りまだ試験中で回路が確定され ていません。


● 感想


 3Dプリンタを使う様になってから、電子工作の仕方が大きく変化しました。それまでは 構想がまとまったら、最初にブレットボードで回路を作ってから、その回路に合わせた機構部品を探し、上手くできたらケースを考える。3Dプリンタを使う様 になってからは、最初にするのは 3D CAD による設計です。そこである程度の構想を練ったら、まずは機構部品を3Dプリンタで造形し、それからブレットボードで回路を考え、3D CAD で決めたケースに合う様に配線パターンを決め回路基板を切削する。完成した姿が見える形で作業するというのは予定を考える上で非常に楽です。



 [2015/04/06 09:46:57] 初稿


© 2015 Nishimura Hiromi (NiS-Lab)