スポット溶接用電極ホルダ


 [2015/04/12 11:35:29]


 YouTube でスポット溶接機の動画を探すと、電池タブをスポット溶接するとき、二本の電極を両手に持ちフットスイッチで溶接を開始する動画が見つかります。これが自 作スポット溶接機の一般的な作業風景のようです。私も試してみました。上手くできません。電池を持つ手がもう一本ないと作業が大変です。そんな理由から片 手で電極を持てるツールを作ってみました。


● 3D CAD で設計


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Fig-1: 3D CAD で設計した電極ホルダー


 Fig-1 に 3D CAD で設計したスポット溶接用電極ホルダーを紹介します。電極ケーブルにはカーバッテリー用のケーブル(50A仕様)を使いました。カーバッテリー用のケーブ ルには大きめのクリップが付いています。これはパルスアーク溶接用のプラス電極用に流用しています(今回は使わない)。


 カーバッテリー用のケーブルに銅の棒(φ3.0mm、長さ120mm)を差し込みハ ンダ付けしました。この電極を挿し込むケース(電極ホルダー)を 3D CAD で設計します。


 二本の電極に角度を付け(今回は6度)、電極を出し入れすることで先端の電極間距離 を設定します。電極間隔が決まったら電極とケーブルをイモネジで固定します。イモネジ用の穴φ2.5mmで設計し、造形後にタップダイスでネジ穴をあけま す。


 Fig-1 を見て判るよう、電極ホルダーは非常に単純な構造をしています。


● 電極棒が長い理由


 Fig-1 を見て判る様、何故か溶接電極が異様に長くなっています。電極を移動させスポットの間隔を決めるためという理由もありますが、それだけではありません。最 初、溶接面(ニッケルリボン面)に垂直に立てて溶接を試したところ、派手なスパークが頻発しました。原因は2つの電極に均等に力がかかっていなかったため と判りました(片方が少し浮いている)。2つの電極を溶接面に均等な力で接触させる方法、最初はバネを使う事を考えました。構造が複雑になり、また電極の 間隔は固定される、等々の理由から断念しています。その次に思いついたのが電極(銅の棒)自体の曲げ弾性を利用する方法。電極を垂直ではなく若干斜めに し、溶接面を押さえると、その力で電極が弾性変形します。電極ホルダの姿勢が少々傾いていても2本の電極は確実に溶接面に接触します。


 このとき電極が短いと力を加えてもあまりたわみません。そんな訳で電極棒を長くして います。


● 3Dプリント結果


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Fig-2: 3Dプリンタで造形し電極をセットした状態


 3Dプリンタで造形した電極ホルダーを Fig-2 に紹介します。造形時間は 0.2mm スライスで約1時間40分でした。写真は既にケーブルと電極をセットした状態になっています。電極の間隔を決めたらホルダー横の穴にイモネジをねじ込み電 極とケーブルを固定します。


 これを片手に持ち、もう一方の手で電池を持ち電池タブを押さえます。


● 電池タブのスポット溶接機の準備

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Fig-3: 電極ホルダを溶接機にセットしている様子


 Fig-3 に電極ホルダを溶接機にセットしている様子を紹介しま す。この溶接機はパルスアーク溶接機として開発したものです。いや、正確には電池タブスポット溶接用に開発し、途中でパル スアーク溶接に興味が移ってしまった溶接機です。基本は両者とも同じなので使えています。


 この写真にはフットスイッチが写っていませんね。フットスイッチは左側の RCA 端子に接続します。右側の RCA 端子はパルスアーク溶接用のソレノイドアクチエータ用です。左側のプッシュスイッチはフットスイッチと並列接続されており、プッシュスイッチを押しても通 電します。


● 電池タブを溶接している様子


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Fig-4: 電極ホルダを斜めに接触させ、スポット溶接している様子


 使い古しの乾電池を練習台にして電池タブをスポット溶接している様子を Fig-4 に紹介します。電極ホルダを垂直ではなく斜めに電極を当てているのが判ると思います。この方式にしてから殆どスパークの発生は無くなっています。それでも 何回かはあり、スパークすると銅電極が減ります。減ると左右の電極の長さが変わり、ますますスパークが発生し易くなります。でも写真の様に斜めに当てるこ とで電極の長さが変わっても問題無く溶接ができるようになります。


 フットスイッチを踏んで通電すると接触の弱い方から微かな火花が見られます。またタ ブと電池の隙間付近から微かな煙も見られる事があります。でも、通電しても殆ど変化がありません。それより溶接ケーブルがブルンと動く事に驚きます。


 スポット溶接の跡は非常に小さな点として見られます。これで本当に大丈夫なのかと思 う程に情けない跡です。でもペンチでタブを引っ張ると溶接部分から裂けます。このような頼りない溶接痕でも十分に実用的と思われます。


以上



 


[2015/04/12 12:58:31] 初稿


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